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ダウン症の告知。医療関係者の視点からみた研究論文を読んで

この記事を読むのに必要な時間は約 14 分です。

ありとあらゆる負の感情が入り混じった形容し難い衝撃

オイタパパです。

オイタパパの次男(以下、オイタと表記します)はダウン症のある青年です。

彼がダウン症であると告知を受けた時、妻(以下、オイタアーヤンと表記します)とオイタパパは強い衝撃を受けました。

 

特にオイタアーヤンにとっては、実家での里帰り出産から自宅に戻ってすぐ(それまで実家で実母、実父により手厚くサポート受けていた状況から一転、頼りないオイタパパと幼いオイタ兄と生まれたばかりのオイタの生活がスタートした直後)の出来事であったことを踏まえると、悲しみ、不安、戸惑い、やるせなさ、混乱、いきどおり…ありとあらゆる負の感情が入り混じった何とも形容のし難い衝撃だったのではないかと思われます。

 

我が子がダウン症との告知を受けるということは、それほど強いインパクトがある訳ですが、それは逆に言うと告知する側の医療従事者からすると難しい役回りになります。

今回、医療従事者側から見たダウン症の赤ちゃんの母親、家族への支援のあり方についての研究論文をインターネット上で見つけましたので、今日はこの研究論文を元にダウン症の告知、特に告知時期について考えてみたいと思います。

 

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ダウン症の告知をすることについて

『ダウン症児を受容する母親に関する調査』について

この調査に関する研究論文は以下のURLにて公開されています。(クリックするとPDF資料のダウンロードが始まりますのでご注意下さい
https://rctoyota.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=44&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

まず、この調査の目的ですが、

・ダウン症の赤ちゃんを授かった母親の気持ちと不安内容を明らかにし、地域社会や看護職者が母親や家族対して出来うる支援内容を検討するための材料とする

というものになっています。

 

また、この調査における『告知』についてなのですが、出産直後という回答があることから、この調査における『告知』は『ダウン症の疑い』を含む意味で『告知』という言葉を使用していることが分かります。(採血後2~3週間かかる染色体検査を経ない確定診断はあり得ないため)
このことを前提として、以下、話を進めてまいります。

※主な調査結果は下欄に転載しています。

 

告知時期について

この研究論文を読んでオイタパパが最初に驚いたのは、告知時期についてです。
回答者51名のうち、12名の方が『出産直後』に告知を受けています。

告知時期については、考え方はいろいろあると思いますが、オイタパパとしては命に関わり得る合併症のことを踏まえると極力早いほうがいいと考えていました。

が、この調査結果を見た時には出産直後にこれだけの人が告知を受けたというのは、いくら早いほうがいいとはいえ早すぎるのではないか?との驚きを感じたのです。

 

しかし、合併症の状況によっては、生まれた時点で命に関わりうる状況もある訳で、そうした際にはその疾病はダウン症の合併症であるとの説明はあり得ることだと考えました。

 

ただ、この資料ではそこまで踏み込んだ調査内容とはなっていないので、実際にどのような状況下で告知を受けたのかは定かではありません。

上に書いたように命に関わりうる状況であったり、それ以外でも相応の事情があったのであれば納得も出来るかもしれません。

 

しかし、仮に赤ちゃんが生まれた時に医師あるいは助産師、看護師がダウン症だと感じ、母親・家族への特段の配慮もなく、それをそのまま口に出したというようなことであれば、少し穏やかではない気持ちになってしまいます。

 

出生 1 ヵ月時点での告知について

告知時期でもう一つ目についたのは、『出生 1 ヵ月以内』という方が19名いることです。

この調査は恐らく選択式で回答したものと考えられますので、『出生 1 ヵ月以内』というのは出産した病院を退院し、その後の1ヶ月検診時に告知を受けた方が多いものと思われます。
(出生 1 週間以内 13名、2週間以内 0名)

 

先に書いたように告知時期について、考え方はいろいろあると思いますので、合併症も特に無く命に関わるような状態でないのであれば、医師の考え方として出産して時間が経ち、母親も家族も少し落ち着いてから告知したほうが良いとの考えもあるでしょう。

 

また、出産直後にはダウン症と判別できるだけの特徴が表出していなかったということも、可能性としてはある訳ですから、一概にこの時期の告知が遅いということは無いとは思います。

ただ、以前に『ダウン症と顔。特徴は生まれてすぐに判別できる?』という記事で書きましたが、オイタの場合は生まれた直後から、ダウン症の特徴がいくつも表出していたにも関わらず、1ヶ月検診においても産科医院からは何の告知もされなかったという経験をしてきています。

 

そのような経験を持つオイタパパとしては、もしかしてオイタの時と同じように母親や家族に対する説明やフォローが面倒だから…
というような後ろ向きな理由だったのでは?との疑念を持ってしまいます。

 

出産に携わった医師と1ヶ月検診の医師が同じ人であるならば、自分は告知しなくて済むというような考えにはなり難いでしょうが、もしそうではなく、退院すればもう会うことはないから などと考えていたとしたら…

この点についてはオイタパパの考えすぎ であることを切に願っています。

 

出生 1 ヵ月時点での告知は早期なのか

ところで、告知の時期についてですが、この研究論文の結論部分に以下のような記述があります。

『全体の約 9割が出生後早期に告知を受けており、出生後の告知を「否定的」と捉えた割合の方が多かった。…』

つまり、『出生 1 ヵ月以内』も早期だとの認識です。

確かに母親や家族の精神的落ち着きを優先するのであれば、1ヶ月経過後というのは一つの考え方になるのかもしれませんが、命に関わり得る合併症のことを考えるとオイタパパとしては遅いように感じます。

ここまで読んでこられたみなさんは、告知時期についてどのように考えられるのでしょうか?

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研究の取組スタンスへの疑念

また、この研究論文ではダウン症児とその家族への支援の必要性について、以下のような考察をされています。

『精神的な衝撃を緩和する工夫として、医師や看護職者が告知時から支援し、その後も継続して援助することが重要となる。

また、ダウン症が疑われた時点から、ダウン症児とその家族を支援し始めることが必要になる。

さらに告知後は、医師・看護職者・他のダウン症児の親などがそれぞれの立場でできる心理的サポートを行い、両親と一緒に子どもの養育について考えていくことが大切となる。』

確かにダウン症児とその家族への支援の必要性が書かれていますが、具体性に欠けた薄っぺらい内容であるようにオイタパパには思われます。

 

回答者51名、未回答者を含めると100名程度の方に対して行ったある程度大きな調査において、こんな表面的なあたり前のことが得られた知見というのは、いったいどういったことなのでしょうか?

 

ネット上で偶然見つけただけの やや古い研究論文資料に腹を立てても仕方がないのかもしれませんが、もしこれが日本の周産期医療の最前線に従事する医師・看護職者の一般的な取組姿勢だと考えると寒気を感じずにはいられません。

 

この調査から10数年経過した今、このような受け身的なものではなく、ダウン症児とその家族への支援の必要性についてより能動的に親身に考えて頂けるような医療体制へと変貌していることを願うばかりです。

 

アメリカにおける告知

今回、インターネットで情報を探している中で、アメリカにおける例として、以下のような記述のある資料も見つけました。

『米国では、周産期における告知に関する法律(Prenatally and Postnatally Diagnosed Conditions Awareness Act)が2008年に施行され、ダウン症の告知を行う際に医療者が親に提供すべき情報等が定められており、早期療育に向けた親への支援体制が整っている。』
(※出典:https://huhs.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=7&file_id=22&file_no=1
クリックするとPDF資料のダウンロードが始まりますのでご注意下さい

今回は、このアメリカの法律の具体的な内容を把握するまでには至りませんでしたが、引き続き探し見つかり次第、この場で報告したいと考えています。

 

おわりに

最後になりましたが、オイタパパの稚拙な考えで批判めいたことを書き、気分を害された方もいらっしゃるかと思います。

叱責含めましてご意見等ございましたら、大変お手数ではありますが、お問い合わせページから送付していただきますようお願いいたします。

 

研究における調査の概要

◎【調査概要】『ダウン症児を受容する母親に関する調査』
(※出典:https://rctoyota.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=44&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1 クリックするとPDF資料のダウンロードが始まりますのでご注意下さい

調査者 :日本赤十字豊田看護大学 中垣 紀子 ほか
調査期間:平成 17 年 7 月~ 10 月
調査方法:無記名アンケート形式(郵送)
調査対象:ダウン症児をもつ母親
調査数 :51名(回収率 56.7%)

〔調査結果(抜粋)〕

★告知の時期

告知の時期人 数
( )内は%
胎児期(出生前)0
出生直後12(23.5)
出生 1 週間以内13(25.5)
出生 2 週間以内0
出生 1 ヵ月以内19(37.3)
出生 3 ヵ月以内4(7.9)
出生半年以内2(3.9)
出生 1 年以内1(2.0)
出生 1 年以上0

★告知を受けた人

告知を受けた人人 数
( )内は%
両親そろって29(56.9)
母親のみ9(17.7)
父親のみ9(17.7)
その他3(5.9)
無回答1(2.0)

★告知時に支えになった人

告知時に支えになった人人 数
※複数回答
配偶者42
家族26
わが子16
医師5
看護師3
その他5

★告知の内容

告知の内容人 数
※複数回答
染色体異常51
知能遅滞33
合併症23
運動遅滞20
寿命20
将来の見通し15
障害の程度12
その他1

★子どもに対する不安の内容

子どもに対する
不安の内容
人 数
※複数回答
将来40
自立30
発育発達23
就職23
就学18
社会参加14
合併症12
障害9
その他8

★気持ちの整理がついたきっかけ

気持ちの整理がついたきっかけ人 数
※複数回答
同じ障害をもつ子の親との交流35
家族の支え33
我が子の存在30
時間の経過20
早期療養を始めたこと16
医師の支援9
保健師の支援7
看護師の支援1
ケースワーカーの支援1
その他5

 

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